機材購入の際、ほとんどの人がウェットスーツと共に、当然のようにグローブを購入するだろう。
特に冬場、日本でダイビングを行う場合には、防寒のためには重要な装備の一つでもある。
しかし、このグローブについて、是非が問われていることをご存知だろうか?
ダイバーなら、自分はグローブをはめているから安全でも、それが自然破壊につながる可能性があるかもしれないことを知っておこう。
まだ適正ウェイトがわからず、中性浮力がおぼつかない。何かに掴まっていないと深度を保てない。潜行ロープを辿らないと集合地点まで潜れない。などの問題を抱えている初心者ダイバーには、当然手を守るためにグローブは必需品だ。
他にも、潔癖気味(ダイビングを続けていると、潔癖とは言えなくなるのだが・・・)の人にはグローブは欠かせない装備だろう。
実際にグローブは装備の中でも磨耗が多く、頻繁に交換する人も多い。
黒が基調になりがちなウェットスーツに比べ、新品の状態では内側が白い場合が多いグローブは、特に汚れが目立つものでもある。
転じて、グローブがよく汚れる、すぐに破れる、という人は少し注意をしたほうがよいかもしれない。何故なら、その分「何かに触れていた」時間が長いからだ。
基本的にダイビング中に海洋生物に触れることは「禁止」である。
それは海洋生物を守るためでもあり、自分自身を守るためでもあるからだ。
しかし、それが海外のダイバーから非難されている原因になっていることを心に留めて置いておいたほうがいい。
一般的に海外のダイビングショップでは、ガイドの指示を守る“優等生”日本人ダイバーの受けは良い。ガイドの指示を守らず、「LOST」になってしまうダイバーは、圧倒的に好奇心旺盛な欧米人のダイバーが多いからだ。
しかし、優等生の日本人ダイバーが一点だけ非難されるのが、この「グローブ」なのだ。
日本人ダイバーの多くが、ほぼ必ずグローブを装着している。そのため、直に岩や海洋生物に触っても、大きなトラブルになる可能性は低い。だが、「グローブで守られている安心感」から、おかまいなしに海洋生物に触れたり、岩に触れたりすることで、岩についている微小なサンゴ類や繊細な海洋生物を傷つけている可能性があるというわけだ。
グローブをつけていることを非難されるから、という理由で、スキルがないままグローブを装着しないことは絶対にお勧めできない。
しかし、ある程度のスキルが身についたら、グローブを外す心構えも必要かもしれない。
実際に私の周囲のダイバーも、100本辺りを過ぎ、ある程度のスキルがついた頃からグローブをつけなくなり、岩棚などでの観察でも1本の指だけで自分を支え、岩などに触れることに細心の注意を払っている。
グローブをつけていないからこそ、岩などに触れる際には慎重になり、最小限度しか触れないことが自然に身につく。
海を愛するダイバーだからこそ、海に対しても深い愛情で接したいという気持ちの現われなのだ。
私がグローブと交代に選んだのは「指示棒」と呼ばれるステンレスの棒である。
カラビナがついており、BCに装着することもできるし、バンドがついているので、手首に通して常に手に持っていることもできる。
また、長さも30cmほどなので、何かあった際の合図に使う「タンクノッカー」の代わりもできる便利な装備だ。
かといって、自分を支えることに使えば、グローブをはめていることとなんら変わりはないので、その際には直接自分の指で支えるようにしている。
グローブをはめるのは、安全を重視する強い流れのあるポイントだけだ。
強い流れがあるポイント、というのは大型回遊魚を観察するポイントであるため、海外のスポットでよく見られる「カレントフック」を利用し、岩に引っ掛けて自分を固定する。
海外のダイビングスポットでは、このカレントフックは主流で、棚ぎりぎりの位置から凧のようにカレントフックを使い、回遊魚を見ているダイバーを良く目にするだろう。
この、「グローブ」「指示棒」「カレントフック」の使い分けの判断ができれば、上級ダイバーへの一歩につながるはずだ。