明日は待ちに待ったダイビングの日!でもちょっと待って。旅先だからってはしゃぎすぎていないだろうか?ダイビングは体調やメンタルに影響されやすいスポーツだ。ダイビングを思いきり楽しむために、前日からきちんと準備しておこう。
ダイビングは体力を使うので、睡眠不足はもってのほか。睡眠不足は体調不良を呼び起こす。
食べ過ぎていると、次の日お腹が痛くなってダイビング中に用を足したくなることも。トイレのあるボートならいいが、小型ボートのトイレは大抵海に垂れ流しとなる。漁船やビーチからのエントリーだと、トイレすら近くにない。こんな調子ではダイビングを楽しめない。
また、二日酔いのままボートに乗るとボートの揺れに耐えられず具合が悪くなりダイビングどころではなくなる。
ポイントについたころにはぐったりしてとても潜る気になれないだろう。ダイビングが終わる夕方頃からようやく元気になってまた飲み始めるという最悪のパターンとなる。
気持ちが沈んでいると注意力が散漫になり、大きな事故につながりかねない。例えば身内に不幸があったり、失恋したり、仕事で失敗して落ち込んでしまっている時などだ。落ち込むようなことがあった場合はむしろダイビングを中止するほうが望ましい。タンクの栓を開け忘れたり、フィンが緩くて落としてしまったり、ぼーっとしていてバディを見失い一人ぼっちになったりする可能性もある。筆者も以前落ち込んでいた時のダイビングでライトの電池を入れ忘れたことがあった。その時は「まあいいや、なんとかなる」と思ったが、たまたまその日のポイントは地形ダイビングで、暗い狭い洞窟で完全に迷い一人取り残されてしまい絶体絶命だった。たまたま後から来た人のフィンが筆者に当たり、そのフィンをしっかりつかんで絶対に離さないようにしてなんとか暗闇を抜け出した。今こうやって書いている最中でも当時を思い出すと冷汗がでる。器材のチェックを適当にしてしまったこと、それを「なんとかなる」と思ってしまったこと、いつもならそんなことはしないはずなのに、その時は集中力が欠けていて投げやりになってしまっていた。
意外に思われるかもしれないが、パニックを起こす可能性を少しでも減らすためにとても重要だ。
以前水中での待機場所に潜水していく時のこと。海底に降りるにつれて岩に人の顔のようなものが見え始めた。最初は気のせいかと思ったが、よく見るとその顔がだんだん怒った顔になり、最後はその顔が真っ赤になりカッと目を見開いたのだ!そして私の方にその顔が迫ってきたのである。私はパニックになり、水深15mから急浮上してしまった。冷静になって水面からその顔がいた辺りを恐る恐る見てみると、なんとそれは必死で威嚇していたタコだったのだ。人間がどんどん近づいてくるのでタコの方が恐ろしかっただろう。私も本来ならば丸まったタコだと気が付けたのであるが、その前の日にちょっと怖い本を読んでいて実はその日は水中に入るのが怖かったのである。また別の日は、マナーの悪い人が海に捨てたビニール袋が足に絡まって、誰かに海底から足を引っ張られていると思って恐怖のあまり水中で暴れ、エアを必要以上に消費してしまった。その時も前の晩に飲みながら怖い話をダイビング仲間としていたのだ。怖がりの人は前の晩は苦手な話題はなるべく避けるようにしよう。
ダイビングを楽しむためにするべきことは、実は体調管理だけではない。水中は特殊な環境で叫んでも誰にも気が付いてもらえないし、大げさなようだが自分の命は自分で守らなければならない。何かあっても自分で冷静な判断ができるよう、心身ともに準備が必要なのだ。そのためにも不安要素はなるべく取り除き、心から楽しめるよう前日から気を付けておこう。