ダイビングでつながる世界

ダイビングライセンス講習って必要?(マスククリアー編)

マスク

スクーバダイビングのライセンスを取得するには、ライセンス講習を受ける必要がある。そこで学んだ技術や知識は、果たしてライセンス取得後、海に潜る際にどれくらい必要となるのだろうか?ダイビングライセンスの講習では、たくさんの項目を習うのだが、実際にすべてを習得しなくても潜ることはできるのでは?と思っている人も多いだろう。今回は、講習の中でも最も苦手とする人が多いだろうマスク関連のスキルについて書いてみようと思う。

マスククリアーが最初のカベ

マスククリアーは、ライセンス講習を受けるダイバー志望者にとって、最初に直面する『壁』ではないだろうか。何を隠そうこの私もその一人だった。プール実習の前日、自宅の浴槽にマスクを持ち込んでこっそり練習したことは今でも忘れる事は無い。その時に思ったのが「こんな事、実際のレジャーダイビングでやらないんじゃないの?」だった。

マスククリアーって覚えてる?よね

マスクの上部から水を少しずつ入れたら、今度はマスクの上を軽く抑えて鼻から息を吐き出しながら上を向く。この一連の動きでマスク内の水は追い出されるのだが、海水は目にしみるし、鼻に水が入ったり・・・「なぜこんな事やるの?」と思った方は少なくないだろう。実際、私がインストラクターだった当時、このスキルで時間がかかってしまう生徒さんが一番多かったと記憶している。

※マスククリアーのやり方

 

実際のレジャーダイビングでは

講習が無事終了し、ライセンスを手にしてレジャーダイビングへ出かけた皆さんはこのマスククリアーをキチンと使いこなしているだろうか?
なんと、暖かい南の海で奇麗な魚達を目の前に、ほとんどの人がマスクの下4分の1程に海水を溜めたままダイビングを続けている光景をよく目にするのだ。何とも不快な状態でダイビングをしているとしか言えない。
また、せっかく透明度の良い海に潜っているのに、マスクが曇ってしまい周りがよく見えていない人も多い。潜る前にマスクの曇り止めを充分行うのは鉄則であるが、新しいマスクを使った時や鼻から息を必要以上に吐いてしまう人はマスクが曇り易くなる。そんな時はマスク内に少し海水を入れ、ガラス面を洗い流す様にしてからマスククリアーで海水を追い出す。これだけで視界はすっきりして、たくさんのカラフルな魚や地形を楽しむ事が出来るのだ。つまり、マスククリアーはダイビングを楽しむ上で、大切な技術であると言えるのだ。
ダイビング マスククリアー

水の入らないマスクってあるの?

私も今まで何種類ものマスクを試して来たのだが、ダイビング中に全く水が入って来ないマスクを手に入れた事は無い。最初のうちは比較的良い感じであっても、年数が経過すればフランジ(マスクの顔と接する部分)が劣化して少しずつ水が入ってくるのは仕方が無いようだ。人それぞれ顔の骨格や肉付きが違うので、友だちの顔にフィットするマスクでも自分には合わないと言う事は当たり前だ。残念ながら完璧に水の入って来ないマスクは無いので、いろいろなマスクを試して、できるだけ自分の顔にフィットするマスクを探すしか無いようだ。

機材の進化

マスクの上を抑えて上を向きながら鼻から息を吐くマスククリアーが面倒だと思う人は多いと見られ、クリアーを簡単にしてくれる機材も販売されている。実際にマスククリアーでしっかり上を向くと、ウェットスーツやドライスーツの首元から冷たい水が侵入する事がある。夏の暖かいシーズンならさほど気にならないが、冬のダイビングではできれば経験したくない事だ。ならば、上を向かなくてもマスク内の水を追い出せないかと言う事で、鼻ポケットの部分にパージバルブと言う一方通行のバルブが備わったマスクが存在する。マスク内の圧力が高くなれば中から外へ水や空気を排出し、逆に外から中へは入って来ないと言う優れものだ。このマスクであれば、正面を向いたまま鼻から息を吐き出せば、マスク内の不快な水は見事に追い出されてしまう。私も動きが制限され上を向くマスククリアーが出来ない状況での撮影時などには、このパージバルブ付のマスクを利用している。


マスククリアーは大切なスキル

より快適にダイビングを楽しみたいと思うのであれば、自分の顔によりフィットするマスクを探してみたり、パージ機能の付いたマスクを使ってみるのも良いと思う。しかし、これらのマスクでも少なからず浸水の可能性は否定できないので、今回お話したマスククリアーは大切なスキルである。ダイビング中にマスク内へ水が入る事は日常茶飯事であると思って、慌てる事無くマスククリアーをできるようにして頂きたい。上級者へ近づく第一歩として、スマートなマスククリアーを目指してみよう。

トニー by
水中カメラマンのトニーです。 水中での動画撮影を専門に行っており、報道番組やドキュメンタリー、バラエティー番組など多岐にわたり水中撮影を担当しています。 子どもの頃テレビで見た海中への憧れが爆発して趣味でスクーバダイビングを始めました。大学卒業後、一度は会社勤めをしましたが、海の仕事への夢が大きくなりダイビングショップへ転職。 ショップでのインストラクター、現地ガイドダイバーを経て水中撮影の世界へ飛び込み、現在に至る。 紀伊半島や伊豆半島をホームグランドにして、沖縄へもほぼ毎月の様に通う生活を送っています。気がつけばダイビング歴は間もなく30年になりますが、未だに新しい出会いにわくわくしながら潜り続けるおやじダイバーなのです。
Follow