ダイビングでつながる世界

私、モルディブで海洋実習落ちました①~楽園の入口編~

モルディブのサンセット

スリランカの南西、インド洋に浮かぶ1200もの島々からなるモルディブ。エメラルドグリーンの海に珊瑚礁の島々が輪を描くように浮かぶ島。日本では、ハネムーンの場所として人気があり、また、ダイバーの憧れの海でもある。今回は、そんな甘く美しい島で起きた、私のダイビングライセンス取得にまつわる切ない体験をお話しよう。

欲張りモルディブ計画

正直、あまり思い出したくない。だが、話そう。
私のライセンス取得計画は、かなり欲張ったものだった。都内のダイビングスクールで筆記とプールでの実習を済ませた後、モルディブで海洋実習を受け、無事ライセンスをゲットするという計画だ。「筆記試験は日本で受けておいた方がいい」と、客室乗務員時代の元ダイビングインストラクターの同僚からアドバイスをもらい、この計画に至った。どうせ、海に潜るのなら、ダイバーが憧れる海で潜りたい!そんな浅はかな夢を抱きつつ、モルディブへ旅立つ日を心待ちにしながら、ダイビング雑誌の写真を眺め、心躍らせていた。

モルディブ上空写真

モルディブ楽園の入り口

青く輝く海、白い砂浜、ヤシの木に南国の花。「ここは天国、楽園か」と浮かれっぱなしになっても仕方のないような島、モルディブ。水上コテージのシャワールームからは、海に繋がる小さな白い階段があった。階段から下を眺めると、珊瑚に群がる熱帯魚や、太陽の光を浴びた透明に輝くイカが元気に泳いでいた。夕暮れになると、トビウオの群れの水面を叩く音が、繰り返し響き渡り、暗くなりかけた海に姿を消した。夜になると、コテージにかかる桟橋にオレンジ色の明かりが灯り、恋人達の笑い声と音楽が静かに響いていた。明日から始まる「地獄の楽園」を想像するなど微塵もないままに、モルディブの光景に酔いしれた。

モルディブの夜景

異変の始まり

私の訪れたモルディブの島には日本人の女性インストラクターが1名いた。他は全員外国人。ダイビングスクールでの講習で、特にストレスを感じなかった私は、海に潜れることを心待ちにしていた。モルディブでの最初の海洋実習は、ビーチからエントリーし水深5mから8mくらいを海底散歩。穏やかな海の中で、教わった中性浮力も問題なく行えた。

マスククリアの指示を受け、スクールで学んだ通りに実施。問題なくやり終えたと思った瞬間、「もう一度」という合図があった。加えて、ジェスチャーで「マスクを全部、頭から外せ」という指示があったため、ストラップに絡まる髪の毛に気を付けながら、マスクをゆっくり頭から外そうとした。インストラクターは、ストラップを頭から外すのに手間取っていると思ったのか、私のマスクを掴んで外そうとした。その瞬間、インストラクターの身体の一部が私の口元に当たり、レギュレータが口から抜け落ちそうになった。慌てて両手で押さえた隙に、マスクを勢いよく抜き取られた。マスクは案の定、長い髪を束ねていたゴムに引っ掛かり、乱れた長い髪が視界を舞った。
海水に目が慣れてきた頃、インストラクターが指で10カウントを始めた。レギュレータが外れそうになった瞬間、鼻から微量の海水を吸い込んでいたが、冷静を保とうと必死に堪えていた。1カウントは1秒以上に感じた。5カウントする頃には、完全に冷静を取り戻し、10カウントする頃には、小さな怒りが芽生えているのを感じた。
何かが違う。嫌な予感がする。ただ、漠然とした何かが脳裏を過った。

ダイビングの世界へと扉を開けたものの、次々と予期せぬ出来事が…。
次回、<地獄の楽園編>に続く。

Angelique by
航空会社の元客室乗務員。現在、ライターとして活動中。 幼い頃に海中映像に心を奪われ、PADIオープンウォーターダイバー取得。 リゾートダイバーとして世界の海を渡り、8年のブランクを経た後、ダイバーとして復活。現在では、沖縄・四国・和歌山を中心に多くの趣味の合間にダイビングを楽しんでいます。お気に入りのダイブスポットは沖縄県宮古島。陸でも海でも洞窟が大好きな地形派ダイバーです。
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