ダイビングオーシャンブルー

“元気玉”の宝庫、パワーアイランド“うぐる島”

アクティブに本数潜って、世界中を潜り倒したいダイバーや、とにかく美しい南国の島で潜りたいダイバー、近場でいつもの仲間と潜りたいダイバーなど、ダイバーによってスタイルはいろいろだが、今回は、「少し人生に疲れている」や「人に疲れた」など、人生に訪れるネガティブゾーンから抜け出せない、もしくは抜け出したいダイバーにおススメのスポットを紹介しよう。

うぐる島の元気玉①タイムスリップを経験できる

うぐる島は、四国の最西南端にある、とても小さな島である。四国の宿毛市から船で23㎞沖合にある島だ。宿毛市は、高知県の南西部に位置し、愛媛県との境にある。宿毛市は、関西からでも、かなり気合を入れて行かなければ辿り着けない場所にある。宿毛の市営船ターミナルの周りには、昭和初期から何も変わらず時間だけが経過したような光景が広がる。白黒写真から飛び出したような、どこかノスタルジックを感じさせる光景だ。タイムスリップは、うぐる島へ船で渡る宿毛から始まる。社会に定められた時間軸とは違う場所で、失いかけていた自分軸と出会えるはずだ。
 

うぐる島の元気玉②飾らない自分を受け入れられる

定期船がうぐる島の港に入ると、まず旧小中学校が目の前に出迎えてくれる。周囲約7㎞、人口20人ほどの島では、この旧小中学校は、シンボル的存在のようにも思える。島の住民の家々は、山の斜面沿いに建てられ、車が出入りするような大きな道路は存在しない。夏の盆には、旧小中学校前にある集会所を基点に小さな提灯の灯りが点々と灯され、連なった提灯は山の斜面沿いの家々まで続き、夜の村全体を照らす。夏の祭りは、騒々しすぎることのない賑わいが、ほのかに気持ちを高揚させてくれるだろう。何でも過剰すぎる現代社会に比べ、良くも悪くも過剰ではない心地よさがここにはある。肩の力が抜け、飾らない自分を受け入れていなかったのは、自分自身だったことに気付くこともあるかもしれない。

うぐる島の元気玉③気を使わせない優しさに出会える

うぐる島の宿は、商売気のない民宿ばかり。でかでかとした看板などなく、民宿であることは、島の住人だけが知っていればいいというスタイルだ。定期船の到着時に予約していた旅行客を道案内できれば、それ以上の必要はない。民宿に着くと、必要最低限のものだけが置かれた部屋に通され、暑さを忘れさせてくれるような冷たいお茶で歓迎してくれる。シンプルなスタイルだからこそ感じられるもてなしが、とても心地よい。気を張らなくても何でも許してもらえるような、そんな気がする優しさに触れ合えるだろう。

うぐる島の元気玉④全てに受け身でいても大丈夫

島には急な斜面に沿って、階段通路がいくつもある。島の人に教えてもらい、そのうちの1つを進むと、島全体を見渡せる神社へと辿りつく。パラついてきた小雨に慌てて民宿に戻ろうとすると、神社への道順を教えてくれた島の人が傘を持って階段を上がってくる姿が見えた。雨が降りそうだったからと、傘を手わたす表情や所作が、あまりにも自然すぎて、深くお礼を言っている自分が妙に滑稽に思えるほどだった。親切や優しさにも身構えていた、都会で培った自身の習性に気付く瞬間だった。

うぐる島の元気玉⑤海の世界の余韻から醒めさせない

島の港でも、スノーケルをしたくなるような透明度。ボートダイビングを終えたら、そのまま、マスクとフィンを持って港で泳ごうと思いながら、ボートに乗り込んだ。うぐる島の近くにある沖ノ島や柏島と聞けば、マクロの聖地として知っているダイバーも少なくないだろう。このあたりの海域は黒潮の影響で、魚影が濃く、色鮮やかな熱帯魚だけでなく、大型回遊魚などの遭遇率もかなり高いことで知られている。しかし、うぐる島でのダイビングの凄さは、島の陸に戻っても、その海の中の余韻を醒めさせないところにある。海の中と同じ、陸の上でも、自然の中に溶け込んだシンプルな暮らしが、海も陸もひと繋ぎに思わせてくれるだろう。

ダイビングの癒しだけでは物足りないダイバーは、足を運んでみるといい。