四方を島に囲まれた慶良間の海は、年間を通して、台風以外ではそう荒れることもない。
しかし、やはり冬場は波が高く、潜るポイントも絞られてしまうのだが、それだけに、その1本がたまらないものになることもある。
そう、慶良間の海には、1月末から3月にかけて、ザトウクジラが子育てに来るのだ。
そのため、冬場の慶良間ではホエールウォッチングも盛んに行われている。
船上で船に仕掛けられたマイクを通してクジラの声を聞くことも可能だし、壮大なブリーチングを見ることも可能である。
しかし、ダイバーならやはり、水中からクジラを見たいのではないだろうか?
年明けの慶良間はのどかな島々
常夏の沖縄、とはいえ、さすがに冬場は格段とダイビング客は少なくなる。
そのため、冬場の慶良間諸島は通常ののんびりした風情が味わえる。
ゴールデンウィークや夏場の賑わしい慶良間もよいが、冬場の慶良間はその分、ガイドとゆっくりと堪能できるので、個人的にはオススメだ。
運が良ければ、ガイドとワンツーで潜れるので、自分の希望通りのダイビングをお願いすることができるからだ。
大体において冬場のダイビングには、沖縄でもドライスーツを勧められるが、水温を聞いて特に問題がなさそうであれば、5mmウェットにラッシュガード、もしくはフードベスト程度でも問題ないと思う。
経験的には水温20度以下がウェットとドライの境目と考えているので、ぎりぎり水温20度程度の冬場の慶良間であれば、身動きしやすいウェットがいいかもしれない。
こうした水温とスーツの選択には悩むところだが、寒さのストレスを取るか、慣れない場所でのドライスーツの操作を取るかは慢心なく熟考したいところ。
冬場をオススメする第一の理由が「人が少ない」ことである。
何度も沖縄に行ってはいるが、11月~1月でもTシャツで十分な日が多い。
また、国内なので、先に器材を送ってしまって、身軽にアフターダイブを観光に当てることもできる。
当然、観光地も人が少ないため、悠々と過ごせる。
(ただし気温の差があるので、羽織物は必要)
何より、あらかじめ時間が取れることがわかっていれば、年末年始を避ければ、エアチケットも安く手に入れることができるのだ。
それは、自分の中でも忘れられない1本になった
本来なら、お気に入りのカミグーやアリガーケーブル、オガンをオーダーしたいところだが、いずれも冬場は少々波高が高いとのこと。
ガイドはいつもお願いしているところなので、気軽にこうした打ち合わせができるのも嬉しいところ。
それでは、地形好きの私にはここはどうだ?と勧められたのが、阿波連灯台下。
ここは何度も潜っていて、軽いケープになったコースを取り、最後に砂地に出る。
ケープの途中には、水面から光が差し込んで、まるで祭壇のように美しい光景も見られるので、ここもお気に入りの場所のひとつだ。
但し、底は砂地なので、中世浮力がきちんとできていないと、砂を巻き上げてしまう。
こうした場所も、ガイドとワンツーであれば、後続を気にしなくて良いので、多少ぶれても気にならないかもしれない(苦笑)。
のんびりと水中を照らす光を楽しみながら、ケープの地帯を抜けると、クロユリハゼなどが群生しているなだらかな砂地に出る。
ケープを通り過ぎた後で、このポカーンと抜けた砂地にでるのが開放感があってまた良いのだ。
しかし、その日は違った。
いつもより少し沖側にコースを取ったガイドが、そのうちレギュレーターを外して、耳に手を当てる仕草をした。
「?なんだろう?」
と、同じようにレギュを外してみると。
ォオーーン、ゥオオオーーーン
と声がするのだ。
「クジラだ!!」
すぐに分かった。
ブリーフィングで
「まだ1月の頭だから、クジラは早いかもねえ」
などと笑っていたが、いたのだ!クジラが!
それも、思いっきり水中で歌を歌っているのだ。
すぐハンドサインが来た、「2」。
そう、2匹が歌い合っている。
ォオーーン、ゥオオオーーーン
キューーーン ギュルルーーー
地上ならばともかく、水中でクジラの声を聞くと、耳だけではなく、全身に音が響くようだ。
鳥肌がたった。
ガイドと2人で、思わずガッツポーズをしてしまった。
しばし、そこでクジラの歌を堪能したのだ。
大興奮の夜
こんな出来事があるから、ダイビングはやめられない!
エキジットして、すぐ
「サイコー!」
と叫んでしまうのだ。
「あれ、姿見えてたら、俺に抱きついてたでしょ、わくちゃん(笑)」
とはガイドの弁。
私はどうも、晴れ女なのに“にごり女”という嫌な別称を持っていて、実は慶良間でドカーンと抜けて見えた・・・ことがないのである。
当然、この1本も透明度は約20m。
「いやぁ、わくちゃんじゃなかったら、あれ見えてたね!」
「ええ、あれで姿まで見えてたら、鼻血まで出てました!」
そんな大興奮の夜は、お決まりでガイドとの酒宴で終わりを告げるのである。
(なんか飲んでばっかり(苦笑))