ダイビングでつながる世界

宮古島から家族への贈り物-ダイビングでつながる家族の絆

宮古島 八重干瀬の珊瑚礁

沖縄本島から宮古海峡を経て、太平洋と東シナ海の間に位置する宮古島。那覇から50分程の飛行時間で上陸可能な島である。この島に訪れれば、どんな人でも自分を魅了してくれる何かに必ず出会えるはずだ。

ダイビング熱は感染する

当時、まだ若かった私は、人と会えばダイビングの魅力を熱く語り、ダイビングの世界に招き入れたものである。私の熱弁は母親にまで及び、とうとう母親にもライセンスを取らせてしまった。そして、私の計算外のことが巻き起こる。今度は、母親に刺激を受けた叔母が「ライセンスを取りたい」と言い出したのだ。その後、ダイビング熱は、母親から妹へ、叔母から従姉妹へと感染拡大していった。潜伏期間0日、即発症するという恐ろしい感染力。これが、我がダイビング家族誕生の経緯である。

Geographic(地形)な海、宮古島

家族親戚での初ダイビングの場所は、私の独断で宮古島に決定した。宮古島は、主に石灰岩からなる島で、海が大地を削ることによって独特な造形を生み出している。光と大地の演出によって、まさに地球を感じられるダイビングスポットが数多く存在する。海中洞窟の散策や、地質や地形に興味があれば、アカデミックな広がりも楽しめる島なのだ。
宮古島 魔王の宮殿

Coral reef(珊瑚礁)の海、宮古島

当時、私も知らなかったのだが、実は宮古島の八重干瀬(やびじ)は日本最大級の珊瑚礁である。美しいホワイトサンドが広がり、珊瑚の根には色鮮やかな魚が生息する。まるで宝石を散りばめたかのように輝く大地。宮古島は、ダイナミックな地形とは対照的に、穏やかで優しい一面も持っているのだ。
宮古島 八重干瀬の珊瑚礁

ダイビングの楽しみ方は人それぞれ

「とにかく大物が見たい」と言いながら、目の前の小さな魚を追い回し、大物を見逃してしまう残念な母親。中性浮力と人魚のようなフォームに拘る美意識の高い妹。誰よりも多くの魚の名前を暗記した、当時まだ10代だった従姉妹。おしゃべり好きな叔母は、何故か海中では大人しく、カメラを握って離さない。私は、そんな家族の様子を眺めながら、静かに浮遊感を堪能するのが好きだった。同じ空間に居ながらも、それぞれのスタイルで楽しめる。これもまた、ダイビングの醍醐味なのである。
キンメモドキの群れ

年齢やスキルなんて関係ない

狭い海中洞窟(人が1人通過できる程度)の散策をした時のことだった。張り切って最前方に繰り出した母親が、フィンで砂を巻き上げ、母親より後方にいた全員が、洞窟の中で何も見えなかったという残念な出来事が起こった。初心者にはありがちな失敗だ。しかし、それも今ではかけがえのない思い出の1つ。ダイビングを楽しむのに年齢もスキルも気にしてはいけない。そして、諦めてもいけない。自分のペースを守りながら上達し、自分なりの楽しみ方をすればいいのだ。母親もその後、中性浮力も完璧な、マナーを守れる立派なダイバーになったのだから。

ダイビング家族の現在

月日は流れ、家族それぞれの生活環境は変化していった。当時10代だった従姉妹は、立派な社会人となり、結婚に焦り出すお年頃になっている。今でも誰よりも魚の名前を言えるであろう。その後、地形派ダイバーとなった妹は2児の母になったが、当時からの美意識の高さは健在。息子たちとダイビングが出来る日を心待ちにしている。妹も従姉妹も、どんなに忙しい毎日を送っていても、宮古島からもらった宝物は、それぞれの心に大切にしまっていることだろう。
母親と叔母は、ダイビング人生を思う存分満喫し、現在は引退している。老後に、思い返しては楽しめるだけの、十分なダイビング経験と自信を得たに違いない。

これからダイビングを始める人も、始めた人も、一度は宮古島に訪れてみて欲しい。きっと心を震わす何かが見つかるはずだ。次回は、家族の心を鷲掴みにした宮古島のダイビングスポットを紹介しよう。

Angelique by
航空会社の元客室乗務員。現在、ライターとして活動中。 幼い頃に海中映像に心を奪われ、PADIオープンウォーターダイバー取得。 リゾートダイバーとして世界の海を渡り、8年のブランクを経た後、ダイバーとして復活。現在では、沖縄・四国・和歌山を中心に多くの趣味の合間にダイビングを楽しんでいます。お気に入りのダイブスポットは沖縄県宮古島。陸でも海でも洞窟が大好きな地形派ダイバーです。
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